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32話-3 眠りから覚めたなら。

last update Last Updated: 2025-07-12 20:00:47

* * *

エルバートはルークス皇帝に命じられた通り、執務室の仮眠ベッドで眠り、回復した翌日の朝。

執務室で机の椅子に座り昨日こなせなかった山積みの書類に目を通していると、ユナイトが執務室に駆け入ってきた。

「はぁ、エルバート様!」

「そんなに慌ててどうした?」

エルバートは椅子に座ったまま尋ねる。

「フェリシア様を目覚めさせる呪文の書が宮殿内にあるかもしれません」

ユナイトが発した言葉を聞いた瞬間、エルバートは机に手を突き、勢いよく椅子から立ち上がる。

「至急、皆に探させ、私も探す」

その後、エルバートはディアムに伝え、

宮殿に仕えている者達にも通達が行き、懸命に探し始め、

エルバート、ディアム、ユナイト、ゼイン、クランドール、皇帝の側近、リリーシャ、クォーツも必死に探し、

皇帝の間に重要な昔の書物が隠されていることが分かった。

そしてエルバートを含めた8名とルークス皇帝がその書物が隠されている場所に集まると、それは皇帝の座の後ろの壁の中にあり、壁に書いてある古代文字をユナイトが解読する。

「どうやら、古代の書の箱の中に祓い姫を目覚めさせる呪文の書が入っており、古代の書の箱を取り出すには、ルークス皇帝が壁に書いてある呪文を唱える必要があり、唱えると壁が開き、箱の蓋も開くようでございます」

「ユナイトよ、解読ご苦労。ではこれより詠唱する」

ルークス皇帝は壁に両手を当て、口を開く。

「皇帝の聖名に誓い、アルカディアの神々の陽光に祈る」

「我に道を示し、封じられし書の鎖を光の如く解き放て!」

詠唱を終えると、壁が開き古代の書の箱が現れ、続けて蓋が開いた。

そして、ルークス皇帝の手によって呪文の書が取り出され、再びユナイトが解読する。

「月が頂点に昇り深夜の鐘が鳴り響く時、祓い姫に白い花の髪飾りをつけ、真に愛する人がその呪文を唱え、祓い姫の右手に浮かび上がる甲の印に口づけした時、回復の魔法が発動するとのことでございます」

エルバートの瞳に光が宿る。

今月、月が頂点に昇る日は3日後か。

(私が必ず、フェリシアを目覚めさせてみせる)<
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    そして午後には帝都の魔を全て浄化したアベルとカイが軍達と共にアルカディア宮殿に戻り、フェリシアのことを知ったアベルとカイは顔を曇らせる。 だが、アベルはエルバートの肩をぽんと叩き、カイと励ましの言葉をかけ、 リリーシャはフェリシアが目覚めるまで宮殿に残ると言い、 ラズールとクォーツは交代制でブラン公爵邸の管理をしつつ、 エルバートを手伝うディアムやリリーシャと共にアルカディア宮殿の復旧の手伝いをする。 そしてエルバートは復旧と執務をこなしながら、お可哀想に、とフェリシアの部屋の花瓶に白き花を飾るメイド長に憐れみられ、ディアムに心配されつつも大丈夫だとフェリシアの看病をしながら壊れたままだったチェーン付きの勲章のようなブローチを直し続け――、とある深夜。 「エルバート」 寝室のベッドの横に立ち尽くした状態のルークス皇帝に名を呼ばれ、エルバートはその横で跪きながらハッとする。 「何度呼んでも上の空とは」 「大変申し訳ありません」 「ディアムからの報告を側近から聞いたところ、フェリシアが眠りについてから3週間程経過してもまだ、復旧と執務をこなしながらフェリシアの看病を続けているそうであるな」 ディアムめ、余計な報告を。 「大丈夫か? 我から見ても相当疲弊しているように見えるが」 「私は疲弊などしておりませんので大丈夫にございます!」 エルバートは強く否定し、ハッとする。 「ルークス皇帝、今のは……」 「良い。お前をこうして追い詰めた状況にしたのは我自身なのだからな」 ルークス皇帝は儚げな表情を浮かべる。 「お前とフェリシアに幸せになってもらいと思いながらもフェリシアを我だけのものに出来たらという想いもあり、魔に隙を突かれ乗っ取られてしまった」 「本当にすまなかった」 ルークス皇帝は頭を深々と下げる。 「ルークス皇帝、どうか頭をお上げ下さい」 ルークス皇帝は頭を上げ、エルバートを見る。 「私はルークス皇帝を失わずにこうして話が出来たこと、大変嬉しく思っております」 「我も同じ想いだ」 「そして剣を交えた時に感じたが、幼少の

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    * * * エルバートは部屋の椅子に座り、ベッドで眠ったままのフェリシアの右手を握る。 「フェリシア、どうか目覚めてくれ」 「頼む」 エルバートは両目を閉じ、強く祈った。 * * * フェリシアが目を閉じた後、双子のメイドのシエルとノエルが祓いの力を持つ天才医師を連れて皇帝の間に駆け付けた。 なぜか、アルカディア宮殿の魔が急激に弱くなり、 自分達とルークス皇帝の親衛部隊、ゼイン、クランドールの軍で宮殿内の魔の浄化が全て完了し、宮殿外も、間もなく、魔の浄化が完了し、アベルやカイ、その軍達による帝都の魔の浄化が完了するのもそう時間は掛からないとの報告を受けた。 魔が急激に弱体化したのは恐らく、ルークス皇帝を乗っ取った魔を浄化したことによる影響だろう。 「では、殿上医(てんじょうい)は、ルークス皇帝から治療を、シエルとノエルはまずはユナイトの治療を開始して下さい」 「了解しました」 「かしこまりました」 医師は承諾し、シエルとノエルも同時に承諾し、ユナイトの治療にあたる。 そしてユナイトが目覚めると、医師と共に治療をしていき、宮殿外も魔の浄化が完了したとの報告をルークス皇帝の親衛部隊から受ける中、ルークス皇帝の側近のリンク、ゼイン、クランドール、ディアム、リリーシャ、クォーツ、ラズールは意識を取り戻して起き上がり、ルークス皇帝は動けないものの意識は戻り、エルバートも治療を終える。 しかし、フェリシアだけは医師とユナイトが持てる力を使い懸命に治療を施しても一向に目覚めない。 「何故、目覚めない?」 「エルバート軍師長、大変申し訳ありません。私共ではもう手の施しようが……」 医師が謝罪を口にすると、リリーシャの瞳が揺れる。 「フェリシア様、そんな……」 リリーシャの落胆した言葉とすすり泣きを聞いたユナイトは、自身の両手をぐっと握り、口を開く。 「私がフェリシア様に禁忌の呪文でもある破滅の呪文を手紙でお教えしなければこのようなことには……」 「禁忌の呪文でもある破滅の呪文、だと? 一体どういうことだ?」

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   31話-7 すべてを救う為に。

    * * *(このまま、ご主人さまにルークス皇帝をやらせる訳にはいかない)フェリシアは邪気による胸の締め付けに苦しみながらも右腕を動かし、ドレスが少し破けつつも邪気に右手で触れ、祓いの力を使う。すると瞳が神々しく輝き、包まれた邪気を全て祓い除け、自ら拘束を解き放ち駆けて行く。そしてエルバートとルークス皇帝の間に入った。エルバートはギリギリで攻撃を止める。「フェリシア、お前、死にたいのか!?」「はい。このままルークス皇帝をご主人さまがやるとおっしゃるのなら」「邪魔をするな! 私がルークス皇帝をお隠れにせねば、この皇国は滅びるんだぞ!」「それでも、ご主人さまにルークス皇帝はやらせません」「思い出したのです。ルークス皇帝をお救い出来る呪文を」「ですのでわたしがルークス皇帝をお救い致します」「それは我の物になると言うことか?」冷たい顔のルークス皇帝が尋ねる。「我の物になれば特別にこやつから出て行ってやるぞ」「お気持ちにはお答え出来ません」フェリシアに2度断られ、ルークス皇帝の体から邪気が溢れ、急激に膨張する。「それでも、ルークス皇帝はわたしにとっても大切な存在なことに変わりありません」「だからルークス皇帝、少しの間、魔を押さえていて下さい」(そしてご主人さま、ごめんなさい)(この呪文を唱えた後、わたしは破滅します)(けれど、ルークス皇帝とアルカディア皇国をお救いし、必ず守り抜いてみせます)フェリシアは覚悟を決め、エルバートに呪文の言葉を耳元で告げ、ドレスのブローチを左手で掴み、右手を前に出す。するとエルバートも手を前に出し、その手に自分の手を重ね、フェリシアとエルバートはルークス皇帝を見据え、そして。「破滅せよ(ラルナ)!」呪文を同時に叫んだ。その瞬間、光の渦が天からルークス皇帝に向かって降り注ぎ、ルークス皇帝は光の塊となり、そこから眩い光が四方八方に飛散して強烈な爆発音が鳴り響き、蠢(うごめ)くような声と共に魔のみが、まるで、

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   31話-6 すべてを救う為に。

    クォーツが教会に向かい帰って来た時。ユナイトから手紙を預かったと部屋の前でクォーツに手渡された。そして部屋の中に入り、封を開け手紙を取り出し開くと、手紙にはこう書かれていた。フェリシア様、エルバート様の回復の件、承りました。私はこれよりアルカディア宮殿へと向かいます。ですが、その前に貴女に伝えたき最後の呪文があります。この呪文はご両親から聞かされておりましたが、特訓ではあえて教えませんでした。なぜなら、この呪文は破滅の呪文であり、絶対に使ってはいけない禁忌の呪文でもあるからです。しかし、今は非常事態。この呪文を使えば貴女自身どうなるかは分かりかねますが、必ずルークス皇帝をお救い出来ます。その為、貴女に教え、使うか使わないかは貴女に委ねます。この呪文は、エルバート様と手を重ね合わせないと発動しません。お互いの手を相手に向け、重ね合わせ、2人同時に呪文を唱えるのです。呪文の言葉はラルナで御座います。自分はこの手紙を読み終えた時、ルークス皇帝をお救い出来るのだと思う気持ちと同時にエルバートと別れなくてはいけなくなるのかもしれないと怯えた。けれど、覚悟を決めなくては。* * *エルバートとルークス皇帝の刃が激しい衝撃音と共に交錯(こうさく)する。如月の末日にルークス皇帝にはこの世からお隠れ頂くとルークス皇帝の側近から強き宣言された日の夜。牢で、お隠れ頂くならば、せめて、自分の手で、と覚悟を決めた。その決心からフェリシアにルークス皇帝を浄化させる重荷を背負わせたくないと思い、ディアム達が倒れた今もこうして戦っている。だというのに、ルークス皇帝の剣を寸前で交わし受け続け耐えているだけ。これでは牢獄行きを命じられた後、ルークス皇帝にこの場で右肩を剣で斬られる寸前に致命傷にならないよう交わしたあの時と同じようなものではないか。(もう私がお隠れにするしかない)そのことは頭でも理解している。だがやはり。(私はルークス皇帝を失いたくはない――――)「何を迷うている」火花が飛び散る

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   31話-5 すべてを救う為に。

    「マゾク達を殺した……?」「フェリシア、耳を貸すな!」エルバートが叫ぶ。「そうだ。魔に両親を殺された悲しみを知っているお前が我から」「家族同然の仲間の命を、“マゾクの命”を奪ったのだ」覚醒前に見た夢で母が、魔は人の負の感情から生まれた孤独な邪気のかたまりであり、人が生み出した。その為、祓いの力を持つ祓い人である母と父が浄化し清め続けなくてはならないと魔について尋ねた自分に答えてくれた。けれど。「これまでわたしは大切な命を奪って来たの……?」動揺すると、魔の声がフェリシアの精神に強く響き渡る。マゾクノ命ヲ奪ッタノモ、ルークスヲ魔ニシタノモ、エルバートガ牢ニ入ル事ニナッタノモ、全部、オマエノセイ。罪ヲ償エ。罪ヲ償エ。罪ヲ償エ。ソシテ早ク我ノ物ニナルノダ。体がふらつき、エルバートに体を支えられる。「フェリシア、しっかりしろ!」「なんの為にここまで来たんだ!?」なんの、為に?――そうだ。(わたしは、ご主人さまを)(そしてルークス皇帝を救う為に来た)「お断り致します」フェリシアは平常心を取り戻し、強く宣言をした。「耐えるか、さすがは祓い姫」「だが、お前の答えが間違いだったとすぐに証明してやろうぞ」ルークス皇帝はフェリシアを睨む。すると突如邪気に包まれ、邪気がフェリシアの胸を締め付ける。「あ……あ……」「フェリシア!」「エルバートよ、フェリシアの邪気を祓おうとすればもっと苦しむことになるぞ」エルバートはフェリシアの顔を見つめる。「フェリシア、ここで見届けろ」「ご主人……さま……」フェリシアは自分から離れ、ルークス皇帝と対峙したエルバートの姿をただただ見つめた。

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